ケースの紹介

2016.10.06更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

 年金分割の制度が開始され数年が経過しましたが,いまだ制度を勘違いされている方々がおられるようです。一番多いのは,「離婚後,年金分割をすれば,旦那の年金の半分がもらえる」と思っている方です。これは残念ながら「間違い」です。
 そこで,今回は,年金分割の制度とはどのようなものなのか,分割できる割合はどれくらいか,どのように手続をすればよいのかといった点を説明いたします。

●年金分割制度とは?
 年金分割制度とは,平成19年4月以降に離婚をした場合に,婚姻期間中の一方の配偶者の年金保険料の納付実績の一部を分割し,もう一方も配偶者が受け取ることができる制度です。
 年金分割の請求対象は,婚姻期間中の厚生年金と共済年金のみとなります。誤解されやすい点ですが,年金分割制度は,将来受け取る予定の年金額を分割するのではなく,年金保険料の納付実績を分割する制度です。

●年金分割の種類
 年金分割の種類には,合意分割と3号分割の2種類があります。それぞれ分割対象期間や対象者が異なります。
①合意分割
 平成19年4月1日以降に離婚した夫婦は,合意分割が利用可能です。合意分割では婚姻期間中の夫婦双方が支払った厚生年金・共済年金保険料の納付実績の合算が分割対象となります。婚姻期間中であれば,平成19年4月1日以前の納付実績も対象です。
 合意分割の名のとおり,夫婦間で合意した割合によって分割します。分割割合は2分の1が上限となります。夫婦で合意できなければ裁判所が割合を決定します。その場合には余程の理由がない限り,分割割合は2分の1となります。
②3号分割
 3号分割は平成20年5月1日以降に離婚した夫婦が利用可能です。合意分割と違い,配偶者の合意は必要なく,手続さえすれば確実に2分の1の割合で分割できます。しかし,3号の名のとおり,対象者が第3号被保険者のみとなります。第3号被保険者とは,民間企業のサラリーマンの扶養に入っている配偶者を指します。さらに3号分割の場合は,平成20年4月1日以降の婚姻期間中に,第3号被保険者であった期間のみの厚生年金保険の納付実績を分割します。
③合意分割と3号分割の関係
 平成20年4月1日以降の期間は,合意分割と3号分割のどちらの対象にもあり得ます。その場合はどちらかの制度の利用を申請すれば,もう一方の制度も申請したこととなります。そのため,どちらの制度を利用すると得するのかなどと悩む必要はありません。
 3号分割においては,平成20年4月1日以降しか分割対象とはならないので,それ以前の期間の年金分割が利用できる場合は,合意分割を申請します。その場合でも,平成20年4月1日以降は3号分割扱いとなり,2分の1の分割割合に決定します。
④分割割合の相場
 司法統計を見ますと,年金分割の分割割合を定めた調停では,ほとんどのケースで2分の1と定めています。2分の1は合意分割の上限であり,3号分割の割合でもあります。基本的には年金分割は2分の1で分割するものだと考えてよいでしょう。

●年金分割の手続方法
①合意分割の手続
 合意分割の場合には,夫婦間で話し合う前に,まずは分割できる年金の範囲や対象の期間などを知る必要があります。それらの必要な情報は全国各地にある年金事務所へ請求することによって取得できます。年金事務所からの情報を受け取った後にようやく夫婦間で話し合うこととなります。
 以下ではその具体的な方法を説明します。
ア 年金に関する必要情報を取得する
 年金事務所へ情報の開示を請求するために,下記の必要書類を提出することで3~4週間後に請求者の年金に関する通知書が郵送されます。
 ・情報提供請求書
 ・請求者の年金手帳または基礎年金番号通知書
 ・婚姻期間等を証明できる戸籍の謄本又は市町村長の証明書

イ 分割割合を決める
 年金事務所から郵送された通知書に記載されている情報を基に,夫婦間で分割割合を話し合います。もし話合いで決まらなければ家庭裁判所に調停を申し立てることができます。調停においては調停委員に対して自身の言い分を主張し,調停委員が妥当な分割割合を提示します。その割合に納得できない場合は,裁判所の審判によって分割割合が決定されます。
ウ 分割割合を年金事務所に申請
 話合いによって合意した場合,夫婦双方又はそれらの代理人が,合意内容を記載した書類を年金事務所に提出します。調停や審判の場合は,一方が必要書類を年金事務所に提出します。
②3号分割の手続
 3号分割についての手続の場合は,第3号被保険者が下記の必要書類を年金事務所に申請することで強制的に分割割合が2分の1になります。
 ・請求者の年金手帳または基礎年金番号通知書
 ・婚姻期間等を証明できる戸籍の謄本又は市町村長の証明書

●請求の期限
 年金分割には請求期限があるので注意が必要です。年金分割の種類に関わらず,原則として,離婚が成立した日の翌日から2年以内に請求しなければなりません。ただし,2年以内に調停を申し立てた場合などは,調停が成立した時点で2年を過ぎていたとしても請求が認められます。

投稿者: 弁護士濵門俊也

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