離婚・男女問題コラム

2018.08.31更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。


昨日,当職が注目していた事件の判決が下されました。
それは,生まれた子どもの父親であることを法的に否定する「嫡出否認」の訴えを起こす権利を,夫のみに認めた民法第774条の規定は男女同権を定めた憲法に反するとして,神戸市の60代女性らが国に計220万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決です。
大阪高裁(江口とし子裁判長)は平成30年8月30日,上記規定は違憲ではないと判断し,一審に続き請求を退けました。


争点は民法第774条の違憲性や,法改正しない国に裁量権の逸脱があるか否かという点です。


昨年11月の第一審・神戸地裁判決は「規定は嫡出否認の要件を厳格に制限し,婚姻中の夫婦に生まれた子の身分を早期に安定させる目的で合理性がある」と指摘していました。また,現行制度を合理的と是認した平成26年の最高裁判決も踏まえ,憲法違反には当たらないと判断し,請求を棄却しました。大阪高裁は判決理由において,嫡出否認の訴えを夫にだけ認めているのは「夫は父子関係の当事者で,子の扶養義務を負うなどの法的な権利義務の関係が生じる」からであり,妻は妊娠の時期や相手を選んで生物学上の父子関係を管理できるのに対し,夫はそれができないと指摘し,規定には合理性があり,違憲ではないとしたのです。
また,妻や子にも訴えを認めるかどうかは「社会状況を踏まえた国会の立法裁量に委ねられる」とし,裁量権の逸脱はないとしました。


原告は60代女性のほか,30代の娘と8歳及び4歳の孫2名の計4名です。
原告の60代女性は昭和57年,当時の夫の暴力を理由に別居。その後,夫との離婚が成立する前に別の男性との間に娘が生まれ,男性を父とする出生届を提出しました。しかし,「妻が婚姻中に懐胎した子は,夫の子と推定する」との民法第772条第1項の「嫡出推定」の規定を理由に,男性との間の子だとする出生届は受理されず,民法上は夫しか嫡出否認の訴えを提起できませんので,娘は無戸籍となりました。さらに娘が産んだ孫2人も無戸籍となったのです。娘は法的に結婚できず,孫には就学通知や健康診断の案内が届かなかったそうです。
原告側は「妻や子も訴えを起こせるよう法改正されれば無戸籍は避けられた」と主張しています。ちなみに,3人の無戸籍は夫の死後,認知調停などを経て平成28年に解消されています。


あらためて,民法772条は,妻が婚姻中に懐胎した子は夫の子と推定すると規定しています(第1項)。さらに婚姻の成立の日から200日経過後や,婚姻の解消・取消しの日から300日以内に生まれた子も,婚姻中に懐胎したものと推定します(第2項)。
この推定を覆す「嫡出否認」を訴える権利(否認権)は夫にのみ認められ,妻や子には許されていません(民法第774条)。その立法趣旨は,出産の外形的事実から確定できる母子関係と異なり,「父子関係の証明は難しいため」,嫡出推定は子の利益のため法律上の父を明確化し,親子関係を安定させる点にあるとされています。
上記立法趣旨自体は明白に不合理とはいえませんので,法を解釈・適用し,紛争を解決する裁判所としては,なかなか違憲判決を下すことは難しいと思います。しかし,「それでも」と言い続けなければなりません。
当職の個人的意見としては,否認権者の範囲を夫のみに限らず,少なくとも妻,子には認めるべきだと思います。さらに,生物学的な父にも拡大すべきであると考えています。「父子関係の証明は難しい」といいますが,現在のDNA型鑑定の精度からすれば,99.999……%の確率で生物学上の父であることが判明するからです。司法で解決できない問題である以上,立法で解決するほかありません。

投稿者: 弁護士濵門俊也

2018.03.23更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。


わが国では,DVの防止と被害者の保護を図るため,平成13年(2001年)10月より「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(DV防止法)」が施行され,平成16年(2004年),平成19年(2007年)及び平成25年(2013年)に改正されています。

もはや説明するまでもないこととなりましたが,DVとはドメスティック・バイオレンス(domestic violence)の略であり,直訳すると家庭内暴力となります。最近では,デートDVなどと称する恋人間のものも含まれるようになりました。

DVは程度が相当ひどい場合には,「その他婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)として法律上の離婚原因ともなり得るので,昨今の離婚原因にはほとんどDVの主張が出てきます(当職が担当する離婚事件は,若干被告の比率が高いのですが,まぁDVの主張が多いこと。若干食傷気味です。)。

もちろん,離婚訴訟などでDVを主張しても,相手方が全面的に認めることはほとんどありません(民事訴訟においては,ほとんどが否認事件です。)。民事訴訟における証明責任のルールにしたがい,DVを主張する側が立証をしていかければなりません。ただ,DVの証拠がまったくないということもよくある話であり,場合によっては証拠を捏造してくることもあります。

相手方から暴力を受けたら基本的には別れる方向で検討せざるを得ないでしょう。相手方が離婚や交際をやめることを拒んだり,ストーカー化する場合に備えて,客観的な証拠を残しておくことはたいへん重要なことです。証拠を示すことができれば,訴訟等で有利に利用できますし,警察等に相談する際も誠実な応対をしてもらえる材料になると思います。

そこで,今回は,「DVの証拠の残し方」について解説したいと思います。なお,DVには経済的暴力や精神的虐待等も含まれますが,ここでは物理的な暴力行為に限定するものとします。


●DVの証拠には何がある?


① 医師の診断書

医師の診断書は,DV事件でよく提出される証拠の一つです。ただし,医師の診断書は必ずしも万能ではありません。医師の診断書で客観的に立証できるのは,傷害を負った事実であり,その受傷原因がDVであることまでは必ずしも立証できません。
そのため,後述のメモや日記などでの補強が必要となります。


② 写真
傷の様子や,壊された物品などの写真も有力な証拠の一つです。生々しい傷跡の写真などは事実認定者である裁判官等に対し,視覚的に訴えることができ,彼らに与えるインパクトも大きいと思います。


③ 電話等の録音,メール
いわゆるハネムーン期と呼ばれる安定期に,DV加害者が謝罪をしてくることがあります。その際のメールや謝罪の録音などは,いわば加害者の自白といえますので有力な証拠になるでしょう。逆に脅迫的な内容もろだしのものも十分活用できます。


④ メモ,日記
DVを受けた状況のメモやそれを記した日記などを作成することはいろいろなところで推奨されています。ただ,相手方がDVを否認している場合に,メモや日記だけでDVが認定されることはまずないと考えてよいのではないでしょうか。メモや日記ですが,裁判上の事実認定においては,その証拠価値はほとんどないと思います(もちろん,油断はできないので,しっかり弾劾しますが)。
とはいうものの,メモや日記は後日DVに関する正確な主張をするために有用ですし,メインの証拠とはならなくても診断書などの客観的証拠を補強する証拠にはなります。その観点からも,ないよりはマシといえますので,やはりメモや日記は作成しておくべきでしょう。
メモの作成の仕方としては5W1Hを意識して,いつ・どこで・誰が誰に対して・何を・どのように行ったかをきっかけや経緯を含めてできる限り具体的に書いておきましょう。一般的には,本人が実際に体験したことというのは具体的に述べられると考えられており,逆に具体性がない供述は信用性を低く見積もられてしまいます。しかし,記憶というものは薄れてしまうものであるから,なるべく体験した日に詳細なメモなり日記をつけておくことが重要です。家族にメールを送るなどしてもいいでしょう。
その他,警察に通報するなどの実績作りも有効です。それなりに傷害を負っている場合は,逮捕までされることもあります。


●できるだけ客観的な証拠を収集することが重要


以上,DVの証拠をみてきましたが,男女の不満というものは2倍にも3倍にも話が盛られるのが通常でしょう。そのため,客観的な証拠に基づかない主張というのは基本的には話半分にしか聞いてもらえないということを知っておきましょう。

DVを本気で立証する気があるのなら,客観的な証拠を残しておくことが重要です。

投稿者: 弁護士濵門俊也

2018.03.19更新

こんにちは。人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。


離婚の際によく問題になるものの1つとして,「婚姻費用」というものがあります。

婚姻費用とは「夫婦が通常の社会生活を維持するのに必要な生活費をいい,衣食住の費用・交際費・医療費・子供の養育費(子の監護費用)・教育費等である。」(内田貴『民法Ⅳ』(東京大学出版会・平成14年・29頁))

婚姻費用 とは「一般的には,夫婦とその未成熟子の共同生活のために必要とされる費用であり,具体例として,衣食住に関わる費用や,子供の養育や教育等に関わる費用,医療費などが考えられる。もっとも,子の状況(病弱であり,生活能力もない場合)や親の経済状況等に応じて,成年の子のための生活費や学費も,これに含まれるとされている。」(窪田充見『家族法』(有斐閣・平成23年・68頁))


? なかなか定義だけみてもイメージできない方もおられるかもしれません。

現在,婚姻費用が実際に問題になることが多い場面は,夫婦が別居をした場合でかつ離婚が成立していない場合です。
このような場合,とくに専業主婦(主夫)の方は,通常,十分な生活費を得る仕事を有していません。このままでは,専業主婦(主夫)の方は直ちに生活に困窮してしまいます。
そのため,このような専業主婦(主夫)の方が,配偶者に対して,生活費等を請求する場合に問題となるのが「婚姻費用」です。
このように,婚姻費用の分担は,夫婦共同体における内部的な関係として位置付けられるものです。もっとも,とくに問題なく家庭生活が営まれている場合には,婚姻費用分担をめぐる問題が生ずることは多くないでしょう。
実際に,この問題が顕在化するのは,婚姻が破綻しつつあるような場面においてです。


ちなみに,この婚姻費用を請求できる or 支払わなければならない根拠は,民法第760条にあります。


(婚姻費用の分担)
民法第760条 夫婦は,その資産,収入その他一切の事情を考慮して,婚姻から生ずる費用を分担する。


婚姻費用については,様々な論点や問題があります。
今回解説をするテーマは,「婚姻費用分担義務の始期」です。
すなわち,「別居した場合,いつから婚姻費用の支払を相手方に請求できるのか?」というテーマです。


●婚姻費用分担義務の始期は「請求した時」


結論としては,婚姻費用分担義務の始期は,一般に「請求した時」と考えられています。

例えば,ある有名な東京高裁の決定は以下のように述べます。

「婚姻費用分担義務の始期は,同義務の生活保持義務としての性質と両当事者間の公平の観点から考えれば,権利者が義務者にその請求をした時点と解すべきである。」(東京高決昭和60年12月26日判タ603号80頁)


上記決定は30年以上前の決定ではありますが,そこで示された考え方は,現在の裁判所でも支持されています。例えば,最近の審判例でも,つぎのように説明されています。

「本件審判において形成すべき婚姻費用分担の始期については,申立人が本件調停を申し立てた平成26年●月とするのが相当である」(東京家審平成27年6月26日判時2274号100頁)


「その始期は,本件調停申立時である平成24年●月分からと認めるのが相当」(福島家郡山支審平成25年6月10日家月65巻7号198頁)

「婚姻費用分担の始期については,婚姻費用分担調停の申立時と解される」(横浜家審平成24年5月28日家月65巻5号98頁)


●始期は婚姻費用分担調停申立時に限らない


上記裁判例をみますと,婚姻費用分担義務の始期は調停申立時に限るかのような気がしてきます(実際,Webサイト上にはそのように断言している解説もあります。)。しかし,結論から申し上げますと,必ずしも調停申立てによる必要はありません。ある裁判例は次のように述べます。


「その分担の始期については,婚姻費用分担義務の生活保持義務としての性質と当事者間の公平の観点からすると,本件においては,申立人が相手方に内容証明郵便をもって婚姻費用の分担を求める意思を確定的に表明するに至った平成●年●月とするのが相当である。」(東京家審平成27年8月13日判時2315号96頁)

この裁判例の匿名解説も次のように述べます。
「婚姻費用や養育費の支払時期については,裁判所の合理的な裁量によって決定すべき問題であるが,実務上は,権利者が婚姻費用や養育費の分担請求をした時とすることが多く,通常は,調停や審判の申立てをした月としている。もっとも,調停や審判の申立てをする前に婚姻費用や養育費の請求をしたことが内容証明郵便や電子メール等で明らかな場合には,その請求をした月を始期とすることが多い。」(判時2315号96頁)


「実務では,義務者の支払義務は,権利者が請求したとき(通常は婚姻費用分担調停又は審判の申立時)に生じるとすることが多いようです。」(秋武憲一『離婚調停(第3版)』・日本加除出版・平成30年・267頁))の括弧書を見落としてはなりません。

投稿者: 弁護士濵門俊也

2018.02.14更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。

 


●親権者が死亡した場合に子どもはどうなるの?


未成年者のお子さんをもつご夫婦が離婚する場合、両親のどちらが一方が親権者となりますが,その親権者が死亡した場合,未成年者のお子さんはどうなるのでしょうか?

この点に関し,親権者が死亡した場合については,親権者がいなくなったものとして,未成年後見人が選任されることとなります(民法838条1号)。
もう一方の親の親権が当然に復活するのではないことにご注意ください。


●未成年後見人の決め方

それでは,未成年後見人は,どういう基準で選ばれるのでしょうか?

この点について、民法839条1項本文は「未成年者に対して最後の親権を行う者は,遺言で,未成年後見人を指定することができる」と規定しています。
よって,親権者が余命宣告をされているような場合で,誰か未成年後見人になって欲しい人がいるときは,遺言を書いておく必要があります。

それでは,遺言がない場合はどうなるのでしょうか。実は,この場合も民法に定めがあります。

すなわち,民法840条1項は,「家庭裁判所は・・・親族その他の利害関係人の請求によって,未成年後見人を選任する」としています。
この場合,裁判所は,あらゆる一切の事情を考慮して,もっとも子どものためになると思われる人物を選びます(民法840条3項)。
実際には,親権者の死亡前から子どもと同居している親族がいる場合(同居の祖父母、おじ、おば等)には,その親族が選ばれることが多いようです。


●もう一方の親の親権を復活させたい場合

上記のとおり,親権者が亡くなった場合,未成年後見人が選任されるのが原則ですが,もう一方の親が「親権者の変更」(民法819条6項)の申立てを行い,裁判所が親権者を変更するのが適切と認めた場合には,もう一方の親が新たに親権者となります。



●未成年後見人と親権者の変更が競合した場合

未成年の子どもの親族が未成年後見人の選任を申し立て,もう一方の親が親権者の変更の申立てをした場合,どちらが優先されるのかが問題となります。
このようなケースについては,法律に明確な定めがありませんが,法律の趣旨が子どもの利益・福祉を守ることにあることから,子どもにとってどちらが適切かを判断して決めています。
実際には,もう一方の親と子どもの関係が良好な場合には,もう一方の親への親権者変更が認められるケースが多くあるようです。

投稿者: 弁護士濵門俊也

2018.01.16更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。


不倫・不貞行為の証拠となり得る材料はあちらこちらに隠されています。調査会社の報告書はオーソドックスですが,最近は,電子メールはもちろん,LINEやTwitter等のSNSも証拠として提出する機会が増えました(もっとも,裁判所に提出するのは紙ベースの書証としてですが。)。

「不倫の証拠」を家族共有のパソコンで見つけたという人が,証拠として使えるのかと相談される機会もあります。
ここで問題となりそうな点は,「不正アクセスにならないのか」という点です。相談者は「配偶者がメールサイトにログインしたまま放置していました。追加のログイン操作をせずにメールの中身を見ることができたのですが,これは不倫の証拠として使用しても問題ないでしょうか」と質問してきます。
相談者のように「ログイン操作をせずにメールの中身を見ることができた」場合には,不正アクセスには該当しないのでしょうか。かりに「ログイン操作」をしていた場合には,不正アクセスに該当するのでしょうか。


●解説のポイント
・「上記相談者のケースでは,不正アクセスに該当しない
・オンラインでIDやパスワードを無断入力すると「不正アクセス」に該当する
・不正アクセスで得た証拠は,証拠能力が否定される可能性もある


●「不正アクセス」に該当しない根拠


結論からいいますと,相談者のケースには,不正アクセスには該当しません。不倫の証拠として有効なものだといえます。

不正アクセス行為の禁止等に関する法律第2条4項によると,「不正アクセス」とは,コンピュータ・ネットワークを通じて,他人のIDやパスワードを無断で入力するなどして,他人のコンピュータにアクセスすることだとされます。
相談者のケースでは,メールを閲覧する際にIDやパスワードを無断で入力したという事情はありません。また,かりに,共有PCのキーボードでメールソフトのIDやパスワードを入力していたとしても,「コンピュータ・ネットワークを通じての入力」には該当しません。したがって,不正アクセスには該当しないと思われます。


●不正アクセスで得ると,証拠能力が否定される可能性もある


では,もし,「不正アクセス」に該当する方法で配偶者の不倫の証拠となるメールを手に入れた場合,民事訴訟や人事訴訟において証拠として利用することはできるのでしょうか。
一般的には,違法な手段で手に入れた証拠であっても,原則として民事裁判や人事訴訟において使用することは可能です(民事訴訟等で採用されている自由心証主義により証拠能力の無制限が導かれるからです。)。
しかし,証拠の入手方法が極めて悪質であったり,それによって他人の人権が著しく侵害されたりするような場合は,証拠能力が認められず,民事訴訟等で使用することはできないとされています。
不正アクセスに該当するような場合,すなわち,コンピュータ・ネットワークを通じてのハッキングによって配偶者のメールを入手した場合などは,入手方法がかなり悪質であると考えられること,配偶者のプライバシーを侵害している面は否定できないことなどから,証拠能力が否定される可能性もあり得ます。

投稿者: 弁護士濵門俊也

2017.12.19更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。


●嫡出否認を夫のみに認める民法規定の合憲性を争った事件の第一審判決

 生まれた子との父子関係を否定する「嫡出の否認」を「夫」にのみ認める民法の規定(民法774条,同775条等)は,男女平等を定めた日本国憲法14条等に違反するとして,兵庫県の60代の女性と長女,孫2人が国を相手に計220万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が平成29年11月29日,神戸地方裁判所で下されました。冨田一彦裁判長は「規定は合憲」と述べ,請求を棄却しました。原告側は控訴する方針だそうです。

 原告側代理人の弁護士によると,嫡出否認規定の違憲性を争う訴訟は全国で初めてだそうです。
 冨田裁判長は,夫にのみ否認権を認めることは「生物学上と法律上の父子関係を一致させる要請と,早期に父子関係を確定し身分関係の法的安定を保持する要請との妥協点で,合理性がある」と述べました。
判決によりますと,女性は約30年前,元夫の暴力を理由に別居し,離婚成立前に別の男性との間に長女を出産しました。しかし,男性を父とする出生届は「妻が婚姻中に懐胎した子は,夫の子と推定する」とする民法772条1項の規定により不受理となりました。
 女性は元夫との接触を恐れ,嫡出否認の訴え(民法775条)を提起してもらうことを断念しました。結局長女とその子ども2人は昨年まで無戸籍でした。訴訟では「妻や子が訴えを起こせれば無戸籍にならなかった」と主張していたそうです。
 冨田裁判長は,原告のようなケースについて,「訴訟手続上の個人情報の秘匿や,夫の暴力から保護する法整備などが必要」と言及しています。こうした対策がなければ,妻に嫡出否認の提訴権を認めても行使は困難なことがあると指摘しました。


●無戸籍者問題

 出生届が提出されていない無戸籍者が平成29年8月10日時点で700人いることが,法務省の集計で分かっています。
 このうち,民法772条が定める「嫡出の推定」によって夫(夫が虐待を加えており,それから逃れているようなケース)や元夫(離婚直後に別の男性との間で懐胎したようなケース)の子とするのを避けるため,母親があえて届け出ないケースが約7割にも上っているそうです。無戸籍者は把握できていない例が多く,潜在的に1万人を超えるとの見方もあり,法務省は無戸籍状態の解消について法務局などに相談するよう呼び掛けています。
 法務省が統計を取り始めた平成26年以降に把握した無戸籍者の累計は1426人です。判明後に戸籍を取得した人もいるのですが,先ほどの無戸籍者700人のうち131人は成人しているそうです。また,700人という数字は,平成27年3月時点の567人よりも増えています。
 無戸籍状態を解消するには,家庭裁判所の調停などで元夫との間に父子関係がないことを確認したり,血縁上の父に父子関係を認めてもらったりしたうえで,戸籍を取得する必要があります。家庭裁判所での手続には精神的,金銭的な負担が大きく,ためらう人も多いのかもしれませんが,少なくとも金銭的な負担は法テラスの民事法律扶助制度を利用するなどして対応できます。精神的負担等を少しでも軽減すべく我ら弁護士がサポートいたします。


●無戸籍者問題にお困りのかたは,当職弁護士濵門俊也までご相談ください。

 無戸籍の方が母の元夫の戸籍に記載されることを求めない場合の手続は,つぎのようなものがあります。

 まず,戸籍事務の担当者に,嫡出の推定が及ばないということがはっきり分かれば,嫡出否認の手続によることなく,戸籍上元夫の子とはしないという取扱いが可能です。そのような例としては,まず,離婚後300日以内に出生した子であっても,医師の作成した証明書により,婚姻中に懐胎した子ではないこと(=離婚後に懐胎したこと)を直接証明することができる場合があります。


 このほかにも,裁判手続において嫡出の推定が及ばない事情が証明されれば,嫡出否認の手続によることなく元夫との父子関係を争うことが可能とされています。その結果,元夫との間に父子関係がないことが明らかになれば,戸籍上も元夫の子として取り扱わないことが可能です。どのような場合に嫡出推定が及ばない事情があるといえるかについて,最高裁判所は,「妻が子を懐胎すべき時期に,既に夫婦が事実上の離婚をして夫婦の実態が失われ,又は遠隔地に居住して,夫婦間に性的関係を持つ機会がなかったことが明らかであるなどの事情が存在する場合」と判示しており,一般的には,母の懐胎時に外観上婚姻の実態がない場合をいうと解されています。裁判手続によらなければならないのは,このような事情があるか否かについて,市区町村の戸籍窓口で調査し認定することは困難なためです。

 裁判手続の具体的な方法としては,①元夫を相手として,父子関係がないことの確認を求める親子関係不存在確認の手続,②血縁上の父を相手として,子であると認めることを求める強制認知の手続があります。これらの方法であれば,元夫からしかできない嫡出否認の手続と異なり,無戸籍の方又は母が自ら行うことができます。

投稿者: 弁護士濵門俊也

2017.10.04更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士・濵門俊也(はまかどとしや)です。


仏教学者である植木雅俊先生が,西日本新聞に連載中の「仏教50話」15回(平成29年10月3日付け)に,つぎのような一節がありました。

……………………

「仏陀(ぶっだ)」と書くと,人間離れした特別の存在として受け取られ,「成仏(じょうぶつ)」と言うと,その特別な存在になることか,死後のことだと思われる。

原始仏典にはしばしばブッダの複数形が登場し,釈尊のみを示す固有名詞ではなく,普通名詞である。「法(理法)/〝真の自己〟に目覚めた人」のことだ。

「成仏」という言葉の意味は,「仏に成る」よりも「法/〝真の自己〟に目覚める」のほうが正確である。「仏に成る」では,現在の自己(人間)と別の存在になることになり,現在の自己が否定される。人間存在は否定されるべきでなく,法/〝真の自己〟に目覚めればよい。

釈尊入滅後,教団の権威主義化に伴い「釈尊は天文学的な時間をかけて修行してブッダになった。ブッダになれるのは釈尊のみ」と神格化された。 ところが,最古層の原始仏典には「まのあたり即時に実現され,時を要しない法」という言葉が頻出する。天文学的時間など必要なかった。それは即身成仏,一生成仏を意味する。

……………………

「成仏」とは「法/〝真の自己〟に目覚める」こと,このことを「わかった」だけでは「かわりません」。「わかる」ことよりも「かわる」ことが大事であるといわれます。
そして,「かわる」ことは,「これまでの考え方がかわり行動もかわる」ことになり,その結果「わかった」となるわけです。
「かわりたい」のであれば,まず「かわることを信じて行動する」ということが大切です。その不断の努力が自己の人格を覚醒していくこととなります。

投稿者: 弁護士濵門俊也

2017.08.29更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。


最近当職の皮膚感覚として,面会交流について知恵を絞る場面が増えています。自分自身のことすらよく分かっていないのに,人の気持ちなど理解できるわけないのですが,そこで諦めたら試合終了です。決して諦めることなく,それでも何かあるはずだと子の利益・福祉や様々なことを考慮し,いかにうまく面会交流できるのかを考えています。
さて,面会交流といいますと,別居している親と子どもとが実際に会うことをイメージしがちですが,このような直接的な面会交流だけではなく,間接的に交流する面会交流もあります。今回は,間接面会交流について説明したいと思います。


1 どんなときに間接面会交流か
面会交流の目的は,親が子どもの成長を実感し,子どもも親から愛されていることを実感する点にあります。そのため,基本的には,話をしたり,遊んだり,食事をしたりと直接会って交流することが前提です。しかし,すべての親子にとって直接会う面会交流がベストなのではなく,間接的な面会交流の方がマッチする親子もいます。

1-1 別居親と子どもが遠距離のとき
別居親と子どもとの関係がいかに良好でも,住まいが遠く離れていると,時間的にも金銭的にもそう頻繁には会えません。そのため,直接会うのは夏休みと冬休みにお泊りすることとし,他は間接的な面会交流で補うという方法もあります。

1-2 子どもの拒否が強いとき
家庭裁判所において面会交流の案件が扱われる場合,子どもが拒否しているからといってただちに面会交流できないこととはなりません。どうして子どもが拒否しているのか,拒否の背景に同居親の問題行為(別居親の悪口を言う等)があるのではないか等といったことを考えていくこととなります。そのため,子どもが拒否しているからといって直接的な面会交流への道が閉ざされるわけではありません。
しかし,何ら合理的な理由はないけれど子どもの拒否が強いときや,子どもの年齢がある程度高いときは,むりやり直接的な面会交流を決めても実効性がありませんので,まずは間接で実施しましょう,という結論になることもあります。裁判所以外の協議の場でも同じことがいえると思います。

1-3 子どもが心身の病気であるとき
別居親には何ら問題はないのですが,子ども側の要因で直接会うことが難しい場合があります。例えば,父母の激しい紛争に巻き込まれた結果,別居親と会うと心身の不調を訴える子どもがいます。また,精神的な問題ではないけれど,難病や持病があり,同居親から「しばらくはそっとしておいてほしい。」という希望が出されることもあります。

1-4 親子が長い間会っていないとき
別居親と子どもが長い間会っていないとか,そのせいで既に子どもが別居親の顔を忘れてしまっているという場合があります。この場合,家庭裁判所であれば(とくに子どもが小さい場合),まずは「おじさん」,「おばさん」と遊んでみようという設定で試行的面会交流を行うことも考えられます。しかし,子どもがごまかしの聞かない年齢になっている場合などは,まずは間接面会交流で慣らしてから直接面会交流につなげるという方法があります。長い間会っていなからといってあきらめる必要はありません。ただ,長い間会っていない理由が別居親にある場合は,その理由をきちんと子どもに説明する必要があります。


2 間接面会交流の方法
2-1 手紙
一番オーソドックスな方法は手紙です。とくに有効なのは,子どもの拒否があるときです。別居親からのみ手紙を書くこととし,それを読むか読まないか,返事を書くか書かないかは子どもの自由という具合にしておけば,別居親の関心は伝わるけれど子どもの負担は少なくて済むことになります。子どもの拒否がない場合は,文通も可能です。
手紙は,メールやLINEに比べますと面倒で,今どきの子どもは嫌がると思われがちですが,きちんとした形で手元に残ること,また,普段もらわないからこそ自分宛に届いた手紙が嬉しかったり特別感があったりするようです。ただ,手紙の内容には注意が必要です。離婚の経緯を説明しようとして同居親の悪口を書いてしまったり,親として何かを伝えたいという気持ちが強くて説教調になってしまっては元も子もありません。お互いの近況や,趣味についてでもいいですし,子どもをほめたり応援する言葉も子どもを勇気付けると思います。

2-2 メールやLINE,SNSやfacebookなどのやりとり
今どきの子どもにとっては一番手軽で気負いなくやりとりができるツールです。直接的にやりとりがなくても,お互いのfacebookが見られるようにしておけば,近況や友人関係が分かり,意外と情報が豊富だったりします。一方で,手軽なゆえに別居親から際限なくメッセージを送り続けたりといったトラブルにもなりかねません。節度ある利用が肝心です。

2-3 別居親からプレゼントを渡す
本来,子どもの気持ちは物でつれるものではありませんが,プレゼントをもらえば純粋に嬉しいものです。お誕生日やクリスマスのプレゼント,お正月のお年玉といったものを親からもらうのを楽しみにしているお子さんも多いでしょう。とくに,子どもに拒否があるときは有効です。また,何がほしいかをリサーチする過程で双方向のやりとりも期待できます。ただ,同居親がとても高価なものや生活用品(例えば家電とか)を子どもにねだらせたりして問題化することもあります。通常,親であれば,子どもをどんな風にしつけるでしょうか?別居親のためではなく子どものために,「高価なものをほしがってはいけません。」,「ものをもらったらきちんとお礼を言いなさい。」と言ってあげてください。
プレゼントの内容もいろいろ考えられます。子どもの好きなものを買ってやるのもいいですが,たまには別居親の思いがこもったプレゼントもいいと思います。例えば,子どもの年齢が高ければ,別居親が昔読んで心に残っている本や感動した映画のDVDをプレゼントしたり,是非見に行ってほしい美術館や演奏会のチケットを送ったりするのもいいかもしれません。また,部活動に必要な道具(ボールやラケット,シューズ等)や比較的高価な学用品(電子辞書など)も同居親も含めて喜ばれることが多いと思います。その際,プレゼントのみではなく,メッセージカードも忘れずに付けておきましょう。

2-4 写真や成績表の送付
親からしてみれば,面会交流の目的の一つは子どもの成長を確認することです。しかし,直接会わずとも,写真や成績表といったものを同居親から別居親に送ることでその目的をわずかではありますが達することができます。この方法のいいところは,子どもに何ら負担がないことです。そのため,子どもの拒否が強い場合などには有効です。中には,「お父さん(お母さん)に送らないで」と嫌がるお子さんもいますが,そのくらいは同居親に頑張って説得してもらいたいものです。

2-5 電話やスカイプ
間接と直接の間ぐらいに位置するのが電話やスカイプといった方法です。同じ空間に存在するわけではないけれど,生のやり取りができますし,声が聞けたり顔が見られたりする点で限りなく直接的な面会交流に近い交流が期待できます。ただ,注意が必要なのは,電話やスカイプというのは,直接会って一緒に買い物をしたりするよりも交流の密度が濃く,相手と向き合う姿勢が求められます。そのため,遠距離で頻繁には会えないけれど,親子の関係は良好である場合に有効です。また,この場合,子どもが同居親に気兼ねをしてしまったり,同居親が監視したりするのを避けるため,「子ども部屋で」とか「同居親は別室で待機する」等の注意事項をつけることも考えられます。

2-6 その他
そのほかには,別居親の記憶がほとんどない幼い子どもに,定期的に別居親から送られてくる動画を見せるとか,子どもが書いた絵や作文を別居親に送るとか,引きこもりの子どもとオンラインゲームで対戦するとか,親子の数だけ方法があるようにも思います。

3 まとめ
上記に挙げた方法のほかにも,それぞれの親子に合った方法が考えられます。ただ,間接面会交流は,面会交流を求める側にとっては物足りない気持ちが残るものです。また,本来であれば,親子が直接かかわれるのがお互いにとっていいはずです。そのため,家庭裁判所で取り決めをする際,「再協議時期」を条項に入れることがあります。例えば,当面は間接面会交流でいくけれども,半年後に直接面会交流に関する協議を行うといった具合です。
どのような決め方をするにしろ,一番大切なことは,双方の親には自分たちの感情を少し脇においていただき,子どものことを思い浮かべてよりベターな方法を模索することではないかと考えます。

投稿者: 弁護士濵門俊也

2017.08.17更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。


ここ数年,著名人や政治家等の不倫疑惑の報道が絶えません。その際,ホテル等に入って出ている写真等が撮影されているにもかかわらず,「何もなかった」,「一線は超えていない」などと苦しい言い訳をされる方もおられます。
たしかに,性交渉に及んでいたという明白な証拠はないのですが,もし上記のような言い訳が通用するのであれば,浮気調査など意味がないという話にもなりかねません。
ただ,これは別に著名人らに限った話ではなく,当職らが担当する離婚等の事件においてもしばしば主張される話なのです。

そこで,今回は,不貞行為による慰謝料請求や離婚等請求の訴訟などで,配偶者以外の女性とホテルに入ったという事実だけで,「肉体関係があった」と認定されてしまうのか,「何もなかった」という言い訳は通用するのかといった話について解説したいと思います。


●肉体関係があったとする非常に強い推認が働く


まず,「ホテルに入ったが,何もしていない」という言い訳が通用するほど裁判は甘くはありません。裁判のルールとして,慰謝料や離婚を請求する場合は,請求する側が相手の不貞行為,最も核心的な行為は性交渉等肉体関係があったこととなりますが,かかる事実をを主張・立証しなければなりません。不貞行為の証拠としては,メールやSNSでのやりとりのほか,実際に肉体関係があることを連想させる写真なども証拠としては有効です。
では上記のように,配偶者以外の異性と2人でホテルの同じ部屋に入った証拠があるとします。ホテルという性質上,成人した男女がホテルという密室に入ったうえで,「ただ休憩しただけ」,「話をしただけ」という状況は想定しづらいと思います。経験則上,社会通念からいっても,肉体関係があったと認定できる非常に強い推認力が働きます。

ただ,それでも当事者が「何もしていない」と主張した場合には,どうなるのでしょうか。
その場合,肉体関係がなかったと主張する側が,「肉体関係があった」とする推認を覆さない限り,責任は免れません。単なる主張だけでは推認を覆すことはできません。
言い換えますと,どんな言い訳をしたところで,配偶者以外の異性とホテルの同じ部屋に入った事実があったとすれば,それだけでほぼ不貞行為はあったものと認定されてしまうと思います。

ではかりに,肉体関係が本当になかった場合,配偶者以外の異性とホテルへ入る行為には,何らかの法的問題につながる可能性はあるのでしょうか。
肉体関係がなかった場合でも,そのことが原因となって婚姻関係が悪化したといえる場合には,慰謝料請求ができる可能性もあるかもしれません。また,そのことをきっかけとして長期間の別居に至れば,「婚姻関係を継続し難い重大な事由」があるとして離婚原因とされる場合もあります。

投稿者: 弁護士濵門俊也

2017.08.09更新

こんにちは。日本橋人形町の弁護士濵門俊也(はまかど・としや)です。


離婚に向けての話合いや別居をしている間の「不倫」に関し,法律相談を受けることがあります。
ある男性は,奥さんが家事をしなかったり,セックスレスだった結婚生活に見切りをつけるために別居をして,離婚に向けての話合いをしていました。ただ,別居から半年の間に,別の女性と親しくなってしまったそうです。男性は「それでも不貞行為に当たるのか」と心配していました。
また,ある女性は,旦那さんから「離婚したい」といわれて別居することとなりました。ところが,その後,旦那さんが彼女をつくって交際していることを知りました。とてもショックを受けている様子で,慰謝料を求めたいと考えていました。
たしかに,離婚に向けての話合いをしているとはいえ,相手がすぐに離婚に応じない場合,不倫していたら道義的には問題がありそうです。一方で,もはや修復不可能なくらいの期間別居している場合は,新しいパートナーをつくっても許されそうな気もします。法的にはどんな問題があるのでしょうか。


●婚姻関係がすでに破綻している場合は「不貞行為」に当たらない


離婚が成立しておらず,法律上の婚姻関係が継続しているときは,基本的に「不貞行為」に該当するものと考えられます。「不貞行為」は,法律上の離婚理由となり,不法行為として損害賠償責任を負うこととなります。
ただし,離婚協議中や別居中であるとして,その状況,別居期間及び別居の理由などの事情を総合的に考慮したうえで,夫婦の婚姻関係はすでに破綻していると認められる場合には,不貞行為には該当せず有責配偶者として責任を負うことにはならないと考えられます。
これは,配偶者の一方が別の異性と性的関係をもったとしても,すでに保護に値する夫婦間の貞操義務はなくなっており,そして配偶者の一方が別の異性と性的関係をもつことは,夫婦の婚姻関係を破綻させた事情ではないと評価できるためです。


●「破綻」と認められる基準はあるの?


同居しているよりは,別居中のほうが破綻と判断されやすいとか,別居して間もないよりも,長期間別居を継続しているほうが破綻と判断されやすいといった傾向はあります。また,同居していても,別居期間が短くても,それまでの関係性や状況によっては,破綻していると判断される場合もあります。
逆に,別居期間が1年以上になっていたとしても,この間,子育てだったり,家族生活の維持に相互に協力していたと認められるとしますと,破綻してないと判断されることもあります。このような次第ですから,破綻と認められる基準のようなものを一概に示すことは難しいと思います。
裁判上の離婚事由として,民法で規定されている「不貞行為」の核心的行為は,性交渉(セックスや口淫など)を伴う行為です。そこまで至らないのであれば,不貞行為そのものとはいいにくいですが,それに準じる行為という認定を受けることはあります。また,裁判上の離婚事由としては,「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当すると認定されることはあります。
ですから,「不貞行為」には該当しなくても,交際の程度によっては,法的にも「許されないこと」(違法性・有責性があること)に該当する可能性があるものもあり得ます。
結局,違法性・有責性があるかどうかは,婚姻関係の破綻と評価される状況になってから,交際したかどうかという問題となるますので,なかなか事前に「これなら大丈夫」と太鼓判を押すことは,ほぼできないと思います。

投稿者: 弁護士濵門俊也

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